質問箱への回答

仲介業者は定期借家契約の終了通知を出す義務があるか?

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こちらこそ、お返事をいただきありがとうございます。
仲介業者の責任はどこまでか、というご質問と、管理契約解除後の事務についてのご質問ですね。

まずお答えする前に、賃貸借に関する不動産業者の2つの役割について整理します。
ここを押さえておかないと私の回答がちょっと分かりづらくなってしまうからです。

◆仲介業務:借主の募集~契約締結までの業務(賃貸借契約書案の作成、重要事項説明書の作成などを含む)
◆管理業務:契約締結後~退去までの業務(家賃の入出金管理・更新や再契約の業務・退去精算業務など)

上記は密接に関連していますが、厳密には別の業務です。
より詳細には下記資料の後半にて、まさに「定期借家契約の締結~再契約等に関して仲介業者の責任はどこまで及ぶか?」が述べられています。

◆弁護士 佐藤貴美, 2010「紙上研修 第102号:仲介業者の責任と最近の裁判例」『Real Partner』全国宅地建物取引業保証協会
https://www.hosyo.or.jp/realpartner/1010shijyo.pdf

「仲介」しただけの場合は、その業務は基本的には契約締結までで完了しますので、例えば契約書等に何らかの問題・瑕疵があったことが後から判明したというような場合はともかく、管理業務に関する責任までは問うことができません。
「管理」まで任せている場合は、管理契約書に従って処理することとなり、例えば「終了通知を発送する」ことが委託業務に含まれていたり・発送を指示したにも関わらずそれをしなかった、という場合は責任を問えるでしょう。

但し、原則として賃貸借契約の当事者は【大家さん】と【借主さん】の二者です。
「終了通知の発送」も借地借家法上の主体はあくまでも大家さん(賃貸人)ですから、仲介・管理をしたら自動的にその義務が不動産業者に付与されるという性質のものではありません(※横道の話ですが、そもそも終了通知の発送は「義務」でもなく、出さなければ契約終了を主張できないというだけのものです)。
管理業者も当事者ではありませんので、大家さんに無断で終了通知を発送したり退去要請をすることも普通はしません(※サブリースして管理業者が貸主になっている場合は例外です)。
更新通知もそうですが、時期が来たら大家さんに確認をしてから発送というのが通常です。

従って、1点目の質問については「原則として大家さんの責任範疇(但し、管理委託契約内容にもよる)」というのが回答になるかと思います。
 

また、2点目の質問についてですが、管理委託契約が期間終了前に解除されていた場合、終了に関する一連の作業は、やはり大家さんの仕事となります。
ご質問でいう「契約時の不動産業者」と「管理業者」がそれぞれ別の業者と解釈した場合、上述の通り仲介をしただけの「契約時の不動産業者」には管理責任までは問えませんし、「管理業者」もすでに管理委託契約が解除されているのであれば、その後の責任までは問えない、ということになるでしょう。

なお、大家さんご自身で行うのがやはり難しいという場合は、まったく別の業者に途中から管理委託や一部業務委託をして終了業務をやってもらうということも、もちろんできます。
しかしその場合は、新たな不動産業者は契約時のことや契約前の室内の様子などを知らない状態で進めることになりますので、綿密な打ち合わせが必要になると思います。

以上、こちらが捉えきれていない問題もあるような気がしますが、ご参考になれば幸いです。

 

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