質問箱への回答

サブリース物件で建物所有者が破綻して競売になってしまった!

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はじめまして、永幸不動産株式会社の森下と申します。
ご質問ありがとうございます。

まずは、突然のことでご心配されていることと思量致します。
お住まいの、いわゆるサブリース形式で借りている物件が競売に係ってしまったということですね。
しかも、破綻したのは間に入っている不動産管理業者(甲・賃貸人、以下「甲」といいます。)ではなく、オーナー(建物所有者、以下「所有者」といいます。)の方、という関係性ですね。

先に、心配に思われているポイントへの回答をしていきます。
後半では、競売によって甲やご質問者様の賃貸借契約がそもそも消えるのか・残るのかの判断ポイントを解説します。

少し専門用語が混ざりますので用語解説を加えます。

【用語解説】
マスターリース:所有者と甲の間の賃貸借契約
サブリース:甲とご質問者様との賃貸借(転貸借)契約

◆1 甲に対して敷金の返還請求はできるか?
入札開始~開札までに退去するのであればできると考えます。
競売によって敷金返還が難しくなるのはあくまでも所有者が敷金を預かっている場合ですので、サブリース契約の敷金は無関係です。

競売手続が進行して物件が落札され所有者が変わった場合、状況によってはマスターリース契約が消滅し、同時にサブリース契約も消滅してしまいます。
その場合であっても甲とご質問者様とのサブリース契約に基づく敷金返還請求権まで消滅するわけではないと考えられますが(そうでないと甲の不当利得になってしまいます)、甲がこの物件の管理・賃貸人から退く可能性が高いので、平時と比べて交渉は難しくなると思います。

 

◆2 クリーニングなどの特約はどうなるか?
こちらも◆1と同じような考え方なのですが、入札開始~開札までに退去するのであれば特約は存続すると考えます。
つまり、ご質問者様は甲に対してこれらの費用を支払わなければなりません。

まず、ご質問文の「次に貸すことがない」とか「(クリーニングは)絶対にやらない」という点について、本当にそうなるとは言い切れないところがあります。
後半の解説の通り、競売落札後も依然としてマスターリース契約が残ることもあり得るので、その場合は次に貸し出したり、そのためにクリーニングもすることもあり得るからです。

実際のところ、現在の「競売手続が進行している段階」というのは宙ぶらりんなところがあって、例えば所有者がどこからかお金を工面してきて競売手続の取り下げを求め、それが認められれば競売手続は取りやめになり、元の状態に戻る可能性もあります。
あるいは、入札を開始したものの落札者が現れず、準備期間を経て再度の競売が実施されることもあり、予定通りに終わるとは限らないところがあります。

 

◆3 その他の注意事項:マスターリース契約締結が抵当権設定の前か後か
そもそも、抵当権設定前にマスターリース契約がなされているのであれば、競売が進行して建物が落札されて所有者が変わっても、その契約は保護されますのでご質問者様とのサブリース契約も保護されます。
通常であればここの契約関係がどうなっているかは甲に聞くしかないわけですが、競売手続が進行すると裁判所から「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」という書類(俗に「三点セット」と言います)がインターネット公開されます。
この内容に、マスターリース契約が抵当権に「先立つ」のか「遅れる」のかが記載されますので、確認してみると良いと思います。

但し実務上、仮にマスターリース契約が存続するとしても、所有者が変わった後に甲がそれを必ず続けるわけでもありません。
上記の書類のうち「現況調査報告書」の関係人の証言欄にその辺りの考えも書かれていることがありますので、チェックしてみるのも良いと思います。

以上、競売ならではの特別規定が多いため全容の把握がなかなか難しいと思いますが、参考になれば幸いです。
最後に、賃貸繁忙期対応で回答がかなり遅くなってしまったことについて、お詫び申し上げます。

 

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