賃貸物件のオーナー様向け

大家さんが知っておきたい、定期借家契約の終了通知

定期借家契約終了通知の見本

永幸不動産株式会社の代表、森下です。

前回に続き、大家さんから見た場合の定期借家契約の注意点について解説します。

今回取り上げるのは、これも定期借家契約独特の制度である終了通知制度です。

きちんと理解しておかないと、なんと定期借家契約が終了しないばかりか、普通借家契約に切り替わってしまうということもあるという恐ろしいポイントでもあります。

 

◆そもそも、定期借家契約の終了通知制度とは?

この記事の冒頭にアップしている画像が終了通知のサンプルですが、「もうすぐ契約が終了しますよ」ということを契約終了の1年前~6ヶ月前までに借主さんに通知する、というのがこの制度の基本です。

該当する借地借家法の条文を引用すると下記のとおりです。

❝4 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。(借地借家法第三十八条

まず基本事項として押さえておきたいのは、通知をするのは賃貸人=大家さんであって管理会社や不動産業者ではない点です。確かに、管理会社や不動産業者も普通借家契約の場合の「更新のお知らせ」を日常業務としてこなしていますが、これは似ているだけで別物です。

定期借家契約の終了通知に関してだけは、下記のような対応が必要ですので注意しましょう。

  • 終了通知書面に大家さん自身が記名押印する
  • 管理業者・不動産業者に終了通知に関する代理権を授与する(=委任状を書く)
  • サブリース契約で管理会社・不動産業者を賃貸人にする

これらをせずに通知した場合、せっかく終了通知を出して借主さんも受領したのに無効になってしまう可能性があります。

大家さんに何よりも気をつけていただきたいのは、定期借家契約での運用を依頼している管理会社・不動産業者がこのポイントをきちんと理解しているかどうかです。賃貸借契約書の内容が適正かどうかも含め、事前の入念な打合せは必須です。

 

◆終了通知はどうやって出せばいいのか?

次に、素朴なポイントとして、終了通知をどのような方法で出すか? についてです。

大家さん向けの指南書のうち、特に法律のプロが書いた本ですと「配達証明付きの内容証明郵便で送りましょう!」というふうに書かれることが多いのですが・・・。特に問題を起こしていない普通の借主さんがそんなもの出されたら警戒レベルがいきなりマックスまで跳ね上がります。しかも内容は要約すれば「(1年後~6ヶ月後に)あなたと私の契約は終了します(=出てけ)」という書面です。さて、受け取った側はどんな気持ちになるでしょうか・・・?

もし、どうしても内容証明郵便で送りたい場合は、発送前に借主さんに電話で事情を説明しておくとか、新規契約の段階でその旨を説明しておくなど、配慮が必要かと思います。

 

そもそもなんで指南書で「配達証明付きの内容証明郵便」が推薦されているのかというと、

  1. 大家さんが確かに終了通知を発送したという事実(内容証明)
  2. 借主さんが終了通知を確かに受領したという事実(配達証明

この2点を客観的に証明できるようになるからです。ちなみに、借主さんがファミリーだったりする場合は、契約名義人宛の本人限定受取郵便だと更に万全ということになりますね。

ということは、この2点をクリアできるような穏当な代替手段があればそれでも良いわけです。

弊社でよく行っているのは、借主さんに終了通知の受領証に署名捺印してもらい、それを返送してもらうというシンプルな方法です。これなら普通郵便でも大丈夫ですし、もうちょっと確実性を高めるなら簡易書留やレターパックでもよいでしょう。アパートやマンションが近所なら手で投函したってOKです。

この時ちょっとしたコツがありまして、終了通知と受領証は一体化させて作成し、2枚同じものを送ります。そのうちの1枚だけを返送してもらえれば、終了通知の内容を借主さんが確かに確認して受領した、ということが1枚のペーパーで証明できます。

 

◆定期借家契約のキモは契約期間マネジメントにあり!

最後は、1年前~6ヶ月前という期間中、どのタイミングで終了通知を発送するか? というポイントです。

図示するとこんな感じです

定期借家契約終了通知の流れを描いた図

上記でご紹介した普通郵便などを利用した通知方法を使うのであれば、出来るだけ早く1年前の時点で出してしまうことをおすすめします。「ずいぶん早いな」と思われるかもしれませんが、万が一借主さんが返送を忘れていたり、トラブルが起きてなかなか受領証の返送に応じてもらえなかった場合、ギリギリのタイミングでやり取りをしていると6ヶ月前までに受領証を回収できず、当初の満了日で契約が終了しなくなってしまいます。

もし、のらりくらりとかわされて7ヶ月前ぐらいの時点で受領証を回収できていない場合は、前述した配達証明付きの内容証明郵便(+場合により本人限定受取郵便)を使う方向にシフトしましょう。

様々な物件を定期借家契約で運用している場合、各契約の終了期間がいつなのかを大家さん自身もきちんと把握しておく必要があります。

私からすると「そんなの管理会社に全部任せてあるから大丈夫!」という大家さんが一番危ないです。前回も述べたとおり、管理会社が定期借家契約をよく理解していないことも往々にしてありますし、管理会社がなんの前触れもなく廃業したり、大家さんと管理会社との間のトラブルで管理契約が解約になったなどなど、任せていた結果、気づいたときには通知期間を過ぎていた・・・というのは避けたいところです。

 

ちょっと長くなってしまったので、この終了通知を出せなかった場合にどうなってしまうのか、というポイントは次回に解説しようと思います。

 

 

◆森下へのコメント・質問はこちらからどうぞ(質問箱)

 

最近の投稿

カテゴリー