賃貸物件のオーナー様向け

定期借家契約の終了通知を出さないとどうなる?

永幸不動産株式会社の代表、森下です。

前回は定期借家契約の終了通知制度の基本的な部分を解説しましたが、今回は不幸にも終了通知を出すのを忘れてしまった・出せなかったという時、一体契約はどうなってしまうのか? について解説します。

 

◆定期借家契約の通知期間を過ぎたらどうなる?

たまに誤解されている人がいますが、終了通知を出さなかった・出せなかった場合であっても、当初の契約期間終了後、即座に普通借家契約になってしまう・・・わけではありません。

この場合はあくまでも定期借家契約が終了しないというだけです(以下、便宜的にこれを延長期間といいます)。改めて終了通知をすれば、通知から6ヶ月後に契約を終了させることができます。

図示するとこんな感じです


 

「何だ安心じゃん!」・・・と思いきや、延長期間に突入すると連帯保証人との連帯保証契約は当初契約終了日で終了してしまうという、大家さんにとっては大きな落とし穴が待っています。

実は、普通借家契約の場合は本体である賃貸借契約が更新された場合は連帯保証人は更新後の債務についても保証しなければいけないという最高裁の判例があります。

❝建物賃貸借の更新と保証人の責任(一般社団法人不動産適正取引推進機構:REITO判例検索システムより)❞

一方、定期借家契約は当初契約終了日で確定的に終了しますので、連帯保証契約もそこで打ち切りになってしまいます。この点を争点にした判例はまだないようですが、国土交通省が公表している標準契約書に関して、下記のようにコメントしています。

❝・・・賃貸人が第2条第3項の通知(※引用者注:終了通知のことです)を怠った結果、本契約の期間が満了した後も賃借人が居住を継続することによって生じる債務については、賃貸人の原因で生じた債務まで連帯保証人に追加的に負担させることは適当でないため、連帯保証人の保証債務の対象としていない。❞

❝・・・再契約する場合においては、本契約は確定的に終了することから、新たな連帯保証契約の締結が必要となる。(国土交通省 定期賃貸住宅標準契約書コメントより引用)

引用後段も非常に重要で、再契約を結んだ場合も同様なのです。例え借主さんとの間で再契約が成立したとしても、連帯保証人とは別途改めて連帯保証契約を結ぶ必要があります。それをしていない場合は当初の契約でどうしていようとも無保証になってしまいます。

これを怠ってしまった場合でも、さすがに当初の契約期間中に発生した債務(例:当初期間中の滞納家賃)は連帯保証人に請求できますが、延長期間に入った後や再契約後に発生した債務は連帯保証人に請求できなくなります。

なお、いずれこのブログでも解説しますが、2020年の民法改正以降は連帯保証契約を結ぶ際に極度額の金額が明記されないと無効になります。再契約締結の際に連帯保証契約を断られる・・・という事態も従前より増えることが予測されますので、早めの対策が必要です。

 

◆延長期間が長期間に渡った場合、普通借家契約になってしまう!

冒頭で「即座に普通借家契約になってしまう・・・わけではありません」と周到な伏線を張りながら書きましたが、あまりにも長期間に渡って延長期間が続いた場合、黙示的に新たな普通建物賃貸借契約が締結されたものと判断されることがあり得ます。

地裁の判例ですが、下記のようなものがあります。

❝定期建物賃貸借契約の終了に当たり、賃貸人が契約期間満了後に終了通知をした場合でも、通知の日から6か月を経過した場合は契約の終了を賃借人に対抗できるとされた事例(一般社団法人不動産適正取引推進機構:REITO判例検索システムより)❞

タイトルだけ見ると「なんだ、契約終了できるんじゃん」と思ってしまうところですが、上記の判決要旨で最後の方にこんな事が書かれています。ちょっと長いですが引用します。

❝・・・確かに、Yが主張するように、賃貸人が期間満了後も賃借人に対していたずらに終了通知をしないことは、法の予定するところとはいえないし、特に建物の使用継続を希望する賃借人の地位を不安定にするものといわなければならない。しかし、これらの事態に対しては、期間満了後、賃貸人から何らの通知ないし異議もないまま、賃借人が建物を長期にわたって使用継続しているような場合には、黙示的に新たな普通建物賃貸借契約が締結されたものと解し、あるいは法の潜脱の趣旨が明らかな場合には、一般条項を適用するなどの方法で、統一的に対応するのが相当というべきである。❞

なお、この裁判のケースでは平成19年7月31日終了の契約に対して平成19年11月19日に終了通知が出されているので、それによって6ヶ月後に契約は終了したと判断されています。遅れているとはいえ、延長期間突入後、4ヶ月目には出していたのでセーフ、という判断ですね。

上記引用の長期に渡ってというのがどの程度を指すのかに関しては述べられていませんが、場合によっては定期借家契約が普通借家契約になってしまうという事態は起こり得るということについて、理解しておくと良いでしょう。

 

◆こんなケースの場合は特に注意!

「そうは言っても、長期間終了通知を出さないなんてことはそうそう起こらないよ!」という向きもあると思います。

しかし例えば上記判例のケースでは、定期借家契約を結んだ当初の大家さん(株式会社A)から建物がBさんに売却され、その後さらに原告であるXさんに売却されています。大家さんが次々に変わっていく中で、定期借家契約の終了通知の問題が忘れられていたのではないかと考えられます(※最後のXさんが買ったのは契約終了まで2ヶ月もないというタイミングです)。

オーナーチェンジで購入した物件の借主さんが定期借家契約なのか普通借家契約なのかは、売買契約前にきちんと確認するのがベターです。

似たような問題で、相続物件が定期借家契約で運用されており、遺産分割協議が長期化してしまった・・・なんてケースも考えられます。その間に通知期間を過ぎてしまったり、延長期間に突入することだってあり得ます。また、亡くなった本人には契約の知識があっても、相続人には知識がないというのもごくありふれた現象です。

相続物件の契約内容についてのチェックも、専門家に依頼されるのが良いでしょう。

 

さて、定期借家契約シリーズ記事のうち、終了通知だけで2記事も使ってしまいました・・・。

しかしまだまだ他にも論点がありますので、引き続きお付き合いください!

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